四章 呪われた村

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「ユカリさん! こんな時間に、ごめんね。うちのバカ後輩が変な頼みしちゃったみたいで」 「いいの。いいの。あの人、病気みたいな青い顔してたから、心配してたんだよ。なんかあった?」 迷惑かけたはずなのに、かえって心配してくれるとは。これ以上、ユカリを巻きこむわけにはいかない。ユキは、ごまかした。 「ちょっと、仕事でミスっただけだよ。気にしないで。それより、矢沼くんが預けたもの、すぐ必要になったの。持ってきてくれる?」 「待っててね」 ユカリは、いったん家のなかに消える。数分して戻ってきた。 「はい。これ」と言って、渡してきたのは、タオルだ。 まさか、矢沼のやつ、タオルなんか預けたのか……いや、違った。タオルは、ユカリの親切だ。 「ずぶぬれだよ。ふいたほうがいいよ」 「ありがとう」 「このカサも使って。台風なのに、大変だね。そういえば、坂上くんとは会えた?」 「ああ、うん」 「よかった。坂上くんって、この前、行方不明になった高山さんを旅行に誘ってたらしいんだよね。だから、もしかしたら、二人いっしょに行方不明になったのかなって、あとで気づいて」 ユキは衝撃を受けた。 そうだ。思いだした。 (お母さんが話してたんだ! 高山さん、友達と旅行中に行方不明になったらしいって) しかも、ユカリの話が真実なら、その友達は、リヒトらしい。 (まさか、リヒトくんが高山さんをどうかしたの? リンカたちみたいに殺した……とか? さっき聞いてきたのは、わたしにバレてないか確認したの?) 信じたくはないが、やはり、リヒトは犬神なのかもしれない。 ぼんやりしてると、ユカリが言った。 「これ、預かってたもの」と、封筒をさしだす。 ユキは我に返った。 「ありがとう。今度、お礼するね」 それまで、わたしが生きてたらだけど、と心のなかで、つけたす。 ユキは走って車まで帰った。 すると、アユムが、厳しい顔をして迎える。 「おい、これ見ろよ」 「あんた、何してるの?」 見れば、後部座席に置かれたリヒトのボストンバッグをあさってる。 「あいつ、怪しいだろ。だから、調べてたんだ。そしたら、こんなものがーー」 アユムが見せたのは、数枚の写真だ。 以前、ユキが玉館スーパーで拾ったのと同じ、ポラロイドカメラで写したものだ。 「これ、戸神邸だよね」 「それに、こっちは、あの石碑だ」
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