293人が本棚に入れています
本棚に追加
「ピンボケしてて、わかりにくいのもあるけど……」
戸神邸や石碑をバックに、女が写ってる。ショートカットの背の高い女。
でも、写りかたが、なんだか、おかしい。
何かのありかを示すように、いつも同じポーズで手をあげてる。
全身が発光してるみたいに透けて見えるのは、ただの露出調整の失敗だろうか。
さらに別の写真を見た。
さっきのショートカットの女が血だらけで倒れてる。
あきらかに死体だ。
獣に食い殺されたような死にざまは、おそらく犬神にやられたのだ。
「この人、高山さんじゃない?」
そう。まちがいない。行方不明の高山チサトだ。
三枚の写真を見くらべて、ユキは変なことに気づいた。
写真の下部に日付が入ってる。死体の写真は今年の五月だ。なのに、戸神邸や石碑の写真は、おとついの日付になっている。
「やだ。これ。どういうこと? 日付で言うなら、ふつう、順番が逆だよね」
「時間の設定が間違ってたとか?」
「じゃないと、つじつまあわないもんね」
「とにかく、これでハッキリしたろ? やっぱり、アイツ、犬神だよ」
「そうだよね……そう考えるしかない」
リヒトは殺された直後の玉館の写真も撮ってる。自分で殺して、そのあとに撮影したとしか考えられない。
「急いで、剣、とりにいこう。あいつに先こされると、マズイぞ」
アユムの言葉に、したがった。
駅でリヒトが待ち伏せしてるかもと思った。が、今のところ、姿は見えない。
ユカリから受けとった封筒には、カギが一つ入っていた。
「このカギ、駅のどこに設置されたロッカーかな」
「番号で確認してくしかないだろ」
「A79ね」
「手分けして探そう」
二手にわかれて、駅のなかを歩きまわる。
ようやく、東口の切符売り場近くにAの並びを見つけた。あとは79のロッカーを見つけるだけ……。
「手伝おうか?」
背後で声がした。リヒトの声だ。
ユキは自分の体が、ふるえだすのを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!