四章 呪われた村

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「ピンボケしてて、わかりにくいのもあるけど……」 戸神邸や石碑をバックに、女が写ってる。ショートカットの背の高い女。 でも、写りかたが、なんだか、おかしい。 何かのありかを示すように、いつも同じポーズで手をあげてる。 全身が発光してるみたいに透けて見えるのは、ただの露出調整の失敗だろうか。 さらに別の写真を見た。 さっきのショートカットの女が血だらけで倒れてる。 あきらかに死体だ。 獣に食い殺されたような死にざまは、おそらく犬神にやられたのだ。 「この人、高山さんじゃない?」 そう。まちがいない。行方不明の高山チサトだ。 三枚の写真を見くらべて、ユキは変なことに気づいた。 写真の下部に日付が入ってる。死体の写真は今年の五月だ。なのに、戸神邸や石碑の写真は、おとついの日付になっている。 「やだ。これ。どういうこと? 日付で言うなら、ふつう、順番が逆だよね」 「時間の設定が間違ってたとか?」 「じゃないと、つじつまあわないもんね」 「とにかく、これでハッキリしたろ? やっぱり、アイツ、犬神だよ」 「そうだよね……そう考えるしかない」 リヒトは殺された直後の玉館の写真も撮ってる。自分で殺して、そのあとに撮影したとしか考えられない。 「急いで、剣、とりにいこう。あいつに先こされると、マズイぞ」 アユムの言葉に、したがった。 駅でリヒトが待ち伏せしてるかもと思った。が、今のところ、姿は見えない。 ユカリから受けとった封筒には、カギが一つ入っていた。 「このカギ、駅のどこに設置されたロッカーかな」 「番号で確認してくしかないだろ」 「A79ね」 「手分けして探そう」 二手にわかれて、駅のなかを歩きまわる。 ようやく、東口の切符売り場近くにAの並びを見つけた。あとは79のロッカーを見つけるだけ……。 「手伝おうか?」 背後で声がした。リヒトの声だ。 ユキは自分の体が、ふるえだすのを感じた。
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