四章 呪われた村

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すると、リヒトは、ため息をついた。 「態度がおかしいから、そんなことだろうとは思ったけど。なんで、おれのこと、そんなふうに?」 「戸神くんが言ってた。犬神はリヒトくんだって」 「やっぱり。ほんとは、もっと詳しいこと聞いてたんだな。呪いの正体は犬神か」 「あなたが、そうでしょ?」 「違う」 「じゃあ、あなたが撮った、あの写真は? 高山さんや玉館くんの死体。あなたが犬神だから、撮れたんでしょ?」 リヒトは困惑顔になった。 「見たのか。まいったな」 「ほらね。説明できない」 リヒトは数瞬、だまりこむ。そして、また、ため息をつく。 「わかった。ほんとのこと話す。もとはといえば、そっちが勝手にーー」 そのときだ。構内が急に、さわがしくなる。駅員が何人も、同じ方向に走っていく。 「なんなの?」 「行ってみよう」 リヒトは懐剣をもとどおり箱におさめる。すばやく、おおざっぱに風呂敷をむすぶ。 「ユキさんが持ってていいよ。とにかく、ちゃんと話してからだ」 あれ? この人、わたしのこと殺すつもりじゃないの? とまどうあいだにも、リヒトは走りだしていた。あわてて、ユキも追う。 夜遅いから、構内に人影は少ない。駅員が走っていくのは、さらに、ひとけのないバスターミナルに向かう通路だ。 薄暗い通路のなかほどに、立ちつくす人がいる。白い杖を持つ、目の不自由な人だ。集まった駅員たちも、そこで立ちつくしていた。 温和なはずの盲導犬が、人をおそっている。ラブラドルレトリバーの首輪を両手でつかみ、必死で噛みつかれまいとしてるのは、アユムだ。 ふつうの状態で、盲導犬が人をおそうはずがない。犬神に、あやつられてるのだ。 「アユム!」 「来るな! 逃げろッ」 ユキは、どうしていいのか、わからない。 うろたえていると、リヒトが、かけだした。犬の首輪をつかんで投げとばし、押さえつける。そのまま、犬の首に腕をまわした。 しばらくすると、ラブラドルレトリバーは動かなくなった。 「殺したの……?」 「いや。絞め落とした。今のうちにオリにでも入れといたほうがいい」 犬をはなし、リヒトはアユムに近づく。 「ケガしてるな。どこをやられた?」 アユムは答えられない。うめき声をあげるばかり。肩口あたりから、大量に出血してる。 リヒトがアユムのシャツをめくる。右肩のほか、数カ所に傷があった。
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