四章 呪われた村

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「まあね。こっちにも、わけがあって」 「戸神くんを探してたの? 呪いのこと調べたり……待って、あの写真は?」 猛はキーをさしこみ、エンジンをふかす。 「探してるのは、戸神じゃない。高山チサトだ」 とつぜん、ひらめいた。 「お母さんが言ってた。高山さんの両親が探偵をやとったって。それが、あなたなのね」 「そう」 なんで今まで、そこに思いいたらなかったのか。そうとわかれば、すべてに納得がいく。 「おれは行方不明者をさがす専門の探偵なんだ。ちょっと人にはない特技があってね。ほんとはナイショなんだけど」 そう言って、猛は発車させる。 ますます激しくなる雨のなか、自動車は静かに夜の町へ、すべりだす。 「特技?」 「さっき見ただろ。写真」 「そうよ。それ。あの写真、どうやって撮ったの? なんか変な写りかただった。それに、死体の写真なんて、いつ撮れたの? だから、あなたが犬神なんだって……」 「ユキさん。ちょっと、おれのボストンバッグから、カメラだして」 「今?」 「口で言っても、本気にしないよ」 わけはわからないが、言われたとおりにする。 「はい。これ」 猛は片手でハンドルをにぎったまま、片手でカメラを受けとる。 いきなり、カメラのフラッシュが光った。シャッターを切る音も。猛はカメラを手に乗せただけで、なんの操作もしてないのに。 「なに? 今の」 「カメラ。しまっていいよ。写真、何が撮れてる?」 本体から出てきた写真を、ユキはながめた。変な写真だ。真っ暗な山道で、ユキと猛が倒木を動かしてる。日付は、今日。 「わたし、こんなことしたおぼえないんだけど……」 猛はチラッと写真を見て、 「まいったな。どっかで道がふさがれてるんだ。それは、一時間後のおれたちだよ」 「一時間後?」 また少し、不信な気分になる。 「だから、言ったろ。口で説明しても、わかってもらえないって。念写だよ。 おれはね。念じただけで、写真が撮れるんだ。過去や未来のこと。人が心のなかで考えてること。 今は、一時間後のユキさんが、どうなってるか念じながら撮った」 そんなバカなと思った。 しかし、手品なら、タネを仕込んでおく必要がある。猛がユキに、この写真を見せることは、今の今まで、本人にも予測できなかったはずだ。 「じゃあ、ほんとに、あなたは探偵なのね? リヒトじゃないのね?」
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