ラストクリスマス

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「じゃあ、お先です」 俺は鞄を持つと、同じ課の人達に向けて軽く頭を下げ、職場を後にする。 今年のクリスマス・イヴは平日だったので、午後を半休にした。どうしても、イヴの夜に行きたい場所があったからだ。 この日だけは、仕事漬けの夜にしたくなかった。一年前のクリスマス・イヴから、そうしようと決めていた。こんなことをするのは、初めてのことだった。 職場のビルを出て大通りに出ると、近くの店からクリスマスソングが軽快に流れている。 店を硝子越しに覗くと、赤や緑の様々なクリスマスグッズが並んでいるのが見えた。 大きなプレゼントの袋をそりに乗せ、夜空を翔けるサンタクロースの描かれたタペストリー。内側から七色に光る、赤い帽子をかぶった雪ダルマの置物。 一年前までは、クリスマスにもクリスマスグッズにも、何にも興味がなかった俺。 だが、一年前のことがきっかけで、俺は変わったのだ。
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