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地下鉄に乗ると、ラッシュ時ではない空いてる時間帯だったので、空席がほとんどで、鞄を棚の上に上げると、席に座った。ホームを離れていく電車の窓の向こうには、何も見えない闇が広がる。
それは、静かな夜を思わせた。
闇の中を走る電車に揺られながら、俺の意識は、一年前のイヴの夜に巻き戻ってゆく。
切ないクリスマス・イヴの記憶に……。
その日は、彼女の瑠実と待ち合わせをしていた。
待ち合わせ場所は、都心の駅前にある「時の広場」。
そこは、いつも色とりどりの花々が花壇を彩っていて、レトロな深緑の時計塔が目印になる、待ち合わせに最適な場所だ。二人の職場のちょうど中間地点の駅だったから、仕事帰りのデートの待ち合わせには普段からよく使っていた。
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