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仕事が片付き、再び時計を見上げた時はもう10時30分を回っていた。
しばらく見なかったスマホの画面を確認すると、ラインと不在着信が何件か入っている。全て瑠実からだった。
俺は厚手の黒のコートを羽織ると、職場を後にした。建物から外に出ると、ぱらぱらと雪が降り始めている。建ち並ぶ店先が、色とりどりの電飾に彩られていた。
仕事の疲れで、何度も電車で眠りそうになりながらも、何とか待ち合わせ場所の最寄り駅に着く。駅構内はクリスマスイヴを楽しむために繰り出した人達で、ごった返していた。
外に出るまで、いつも以上に時間がかかり、それだけでさらに疲れが増した気持ちになる。
時の広場に着いて、深緑の時計塔を見上げると、もう11時20分になっていた。人混みの中、周囲をざっと見回し、瑠実を探したが全く見つけられない。
俺はコートからスマホを取り出すと、瑠実の着信にリダイヤルした。数回コール音が鳴った後、留守電に繋がる。
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