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『彼氏に会うの、7か月ぶりだろ? 全然嬉しそうじゃないのは、もう好きじゃなくなったから?』
飛行機の中で私に話しかけるのは、毛むくじゃらの大男のアディ。
沙織と一緒に日本に行くから、観光案内してほしいと言われた。
長時間のフライトも気心の知れた友人と一緒なら苦にならない。
そう思った私は、彼を実家に泊めて1週間の東京観光のガイドを務める約束をした。
アディには恋人の拓己くんのこともよく話していた。
私たちの仲が円満なことは知っているはずなのに、そんなことを聞くなんて余程私の様子が腑に落ちないのだろう。
『遠距離だから不安になったり気持ちがすれ違ったりしたこともあったけど、今はお互いに会えるのを楽しみにしてるよ』
『ホントに?』
『会えるのは嬉しいんだけど、見られるのが嫌なの』
『何を?』
『私を』
これが冬だったらまだしも。
どうして夏なんだろう。
薄着の季節が嫌だなんて思った経験は今までなかった。
『ああ。もしかして、太ったこと気にしてるんだ?』
ストレートに言ってくれるな。おい!
『確かに二の腕やお腹周りはボリュームアップしたけど、沙織は元々細かったから丁度いいぐらいだよ』
『全然良くない! あのね、日本人女性は華奢なの。肉食のドイツ人とは違うの』
まったく誰のせいだと思ってるんだ。
家に帰ればビールにフライドポテト。夕食前に当然のように飲み食いする生活を続けた結果がこれだ。
クリスマス休暇の時はまだそれほどでもなかったのに、冬の間に一気に太ってしまった。
半袖から覗いた二の腕はパンパン。
お腹回りも腰回りも2サイズは大きくなった。
太ももが太すぎてデニムのパンツが上がらない。
それでいて胸の大きさが変わらないのは、にわかデブの特徴だ。
『拓己は細い女が好きなんだ?』
『誰だってこんなデブと並んで歩きたくはないでしょ? 空港で会った途端に振られたらどうしよう。その前に私だと気付いてもらえなかったりして』
こんな身体じゃ、浴衣を着たらお相撲さんだ。
水着を着たら、自前の浮き輪をはめてます状態?
着られる水着がないかも。
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