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『日本食はヘルシーなんだろ? 食生活が戻れば痩せるんじゃないか? 大丈夫。それぐらいの肉付きのほうが、男には抱き心地がいいんだよ』
バチッとウインクしてきたアディは、正真正銘のゲイだ。女なんか抱いたことないって豪語していたくせに。
『この2か月、ジョギングしたり糖質を減らしたり、いろいろやってみたけど全然痩せなかったんだよ。拓己くんの周りには、細くて綺麗な女の人がいっぱいいるのに、目移りしないと思う?』
拓己くんは一言で言えば王子様みたいな人だ。
背が高くて整った顔立ちをしている。物腰が柔らかで、誰にでも優しい。
だから、いつも女の人たちにキャーキャー騒がれて、迫られている。
思いつめた女の子が自殺騒ぎまで起こしたせいで、拓己くんが第1志望の企業の最終面接を受けられなかったりもした。
今はW大出身の拓己くんには不似合いの中小企業で働いているけど、そこでもやっぱり猛然とアタックしてくる女子社員がいて。
その子をうまく躱すために拓己くんは別の女子社員と付き合っている振りをしていた。
正直、私にしてみればどっちもどっちで。
偽彼女の花菜さんと拓己くんが親しくなれば、それはそれでヤキモキしていた。拓己くんには言えなかったけど。
『カモフラージュの彼女は別の男と結婚したんだっけ? それでまた、拓己はモテモテってわけか』
『うん。仕方ないよね。カッコいい男を彼氏にしちゃったんだから』
6月に花菜さんが結婚しちゃったから、女子社員たちが目の色変えて拓己くんに迫っているらしい。
特に同じ課のみのりさんが。
写真で見たみのりさんを思い出して、はあああっと長い溜息を吐いた。
みのりさんは背の高い美人でグラマラスな体型をしている。
出るところは出て、引っ込むところは引っ込んで。
出るべきところが出てなくて、引っ込むべきところが出っ張った私では太刀打ちできない。
それを言ったら、アディが爆笑してCAに睨まれてしまった。
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