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「これはまた対照的なイケメン2人を連れてきたな。で? 沙織の本命はどっちなんだ?」
開口一番にそんなことを聞く父親なんて、うちの父ぐらいなもんだろう。
アディはマッチョタイプの渋いイケメンで、拓己くんは痩せ型で甘いマスクの王子様。
「もう! お父さん、変なこと言って」
「はじめまして。沙織さんとお付き合いさせていただいている飯島拓己と言います」
珍しく拓己くんが私の言葉を遮るように、一歩前に出た。
「どうぞ末永くよろしく」
「お父さん! 立ち話はそれぐらいにして。さあ、2人とも上がって」
ニヤニヤする父を家の中に押し込みながら、2人にスリッパを勧めた。
「拓己さん、お姉ちゃんが太っててビックリしたでしょ?」
父同様に思ったことをストレートに口に出したのは、妹の梨々花。
彼女はどうやらアディが気に入ったみたいだ。ゲイだって知ってるのにね。
「ああ、うん。ちょっとふっくらしたね」
その優しい目がかえって痛かったりする。
本当はどう思ってるんだろう?
こんなデブとは速攻別れようとか? いやいや拓己くんはそんな人じゃない。
でも……今は体型をカバーする服を着ているからまだましだけど、脱いだら凄いんです!
絶対に今年は海にもプールにも行けない。それは間違いない。
「コレハ、ボクノセイ」
片言の日本語と一緒に隣から伸びて来たアディの手は、私の二の腕をムニッと摘まんだ。
「ぎゃあ! 摘まむなー!」
バシバシとアディの手を叩く。
私の二の腕には摘まむとぶ厚い文庫本程度の肉がある。ちなみにお腹は辞書並みの厚さ。
そんなモノを拓己くんに見られたかと思うと恥ずかしくて、こっそり正面の拓己くんを見ると、すごく険しい顔でこっちを見ていた。
いつも柔和な顔の拓己くんがこんな顔するなんて珍しい。と言うか初めて見たかも。
「ははは。仲良いんだな。アディはゲイだっけ? バイだっけ?」
「いやいやお父さん。いくら私だってバイの男と一緒には住まないよ」
「アー、サオリナラ、ゼンゼンOKネ」
「はあ?!」
バチッとウインクしたアディに、私と拓己くんと梨々花の声が被さった。
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