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白鴎堂のオウムのロゴをポケストップ画に似せた環の中に入れた、ポケモン解放区のポスターだ。
「ポケモン解放区」という言葉は、ニュースで紹介されていた、ポケモンGOを使って鳥取砂丘に観光客誘致を図ろう、との鳥取県の「鳥取砂(スナ)ホ・ゲーム解放区宣言」から借用した。
葉月が書店のレジから入り口に眼を光らせていると、アフターファイブの時間帯になってからスマホ片手の人々が続々と店の前に集まり始めた。学生風の男の子やら若いビジネスマンが多い。
果たしてポケモンを誘き寄せるルアーモジュールとポケモン解放区ポスターで客を店内に誘導し書籍や雑誌を手にしてもらうことがでるだろうか。
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日本では配信三日間で1150万人がポケモンGOをダウンロードしたそうで、子供から老人まで、スマホを手にゲームを楽しむ人々の姿をどこへ行っても目にする大社会現象となった。
緑の街路樹が涼しい外堀沿いにはポケモンが多く出没するようで、葉月はトートバッグに入れたスマホの振動に時おり立ち止まりポケモンを捕まえながら、修平と待ち合わせたカナルカフェに向かった。
神楽坂にある外堀に面したデッキのある洒落たカフェだ。思えば、ここは彼に付き合おうと言ってもらった記念すべき店である。
「・・有森さんを好きだからです」
そう明言してくれたあの時の修平の真面目な顔を思い起こして、葉月は一人で微笑した。
好きだから付き合う。そういう単純とも言える修平の純情さが葉月は好きだ。お茶の水店で同僚だった時からこちらも彼には言いたい放題だったし、修平とは話が尽きることがない。
しかし、彼が白鴎堂での研修を終え総実出版に戻ってからも、つい仕事の話を持ち出してしまうのは、二人の関係を深めるためにはマイナスではないだろうか。
いや、今は白鴎堂書店の危機で、ロマンチックなデートに憧れているヒマはない。暗くなり始めた黄昏時の街にレモン色に煌めくカフェの門燈。幻想的な光景に一瞬うっとりと見惚れてから、葉月は思わず顔を引き締めた。
カナルカフェのデッキにテーブルを押さえてくれていた修平の姿を見つけ、葉月はスマホを持つ手を振りかざした。
と、ポケモンが近くにいるとの振動を感じて、即座にスクリーンに眼を光らせる。
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