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「そうね。それにポケモンって図柄が可愛いから、大人の女性でも図鑑が手元に欲しくなる、っていうことじゃないかしら。
自分でやってみてわかったのだけれど、ポケモンを眺めるって一種の癒しだと思う。キュートなピカチューやゼニガメをゲットすると、メロウな気分になれる。
私が任天堂だったら、大人向けのキャラクターグッズ、もっとラインナップを強化するけれど」
「ゲーム会社は子供や若い世代、特に男子に向けてポケモンGOを開発したかもしれないけれど、日本では案外大人に受けている感じだよね。
昨日六本木の居酒屋に行ったら、隣でサラリーマンのオジサン達がスマホを見せ合ってポケモンの話をして盛り上がっていた」
修平の指摘に葉月も同意する。
「そうそう。お母さんがポケモンにハマった、っていう友達もいる。夕飯の準備にスーパーへ買い出しに行く時、いつもスマホを携えて近所でポケモンGOをしているんですって。やり方がわからない、とか電話で質問されて会話が増えたとか言っていた。攻略本とか、売れるんじゃないかな」
葉月が提案すると修平が眼鏡に手を当てて自慢げな表情をした。
「もちろん手は打ってある。来週にはポケモンGO完全攻略本を出版する。
こういう社会現象的ブームはそれほど続かないと思うけれど、これまでゲームなどやったことがなかった層は、一度ハマったら結構じっくり楽しむことになるんじゃないかと思うんだ。
ゲーマーはネットで攻略法を検索して自分で研究するだろうけれど、それこそ子供に聞いてゲームをはじめたような大人に向けて、初級から中級レベルの攻略本をムックで出す。ポケット図鑑と一緒に並べてくれよね」
ポケストップに惹かれて白鴎堂お茶の水店を訪れる客にどうしたら本や雑誌を買ってもらえるか、葉月は修平と話を続けた。
これでは書店と出版社のブレインストーミングみたいでデートとは言えないかも、と密かに不安に思わないでもない。
しかし、総実書房の創業者の息子でマーケティングに詳しい修平と話していると、それなりにタメになるのでつい仕事の話を持ち出してしまうのだ。
生ハムの盛り合わせにイカのフリッター、シーザースサラダにパスタ、と葉月がメニューを選んでいる間、修平は真剣な面持ちでスマホを読んでいた。
葉月はふと思いついて提案した。
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