ポケモンGO番外編

4/14
前へ
/14ページ
次へ
 店に到着したところ修平はまだ来ていなかったので、葉月はワインを注文して戸外のカフェテーブルに陣取った。  スマホを取り出しツイッターをチェックしてみたところ、先ほどアップした芥川賞と直木賞受賞作の宣伝ツイートには反応が皆無だった。  白鴎堂お茶の水店の自称ツイート担当書店員としては悲観せざるを得ない。少なくとも出版社や著者ぐらいはリツイートして拡散を手伝ってくれてもいいのに、とつい愚痴をこぼしたくなる。  今日は何が話題になっているのだろう、とツイート数の多い言葉を調べてみたところ「ポケモンGO」が断トツだった。  ツイッターでネット民の話題になるのはテレビ放映されているアニメだったりするので、昔のポケモン映画でもテレビで再放送されたのだろうか。  葉月は関連ツイートを読み、グーグルで「ポケモンGO」を検索してニュース記事を読み漁った。どうやらこれは知らぬ間に一大事が起きているらしい!  葉月がスマホで記事を検索しているところに修平が現れた。 「ねえ、ポケモンGO、っていうバーチャル・リアリティーのゲームがアメリカですごく流行っているんですって。リリースされた途端に2千万以上ダウンロードされて、街でみんながゲームやっているらしい」  挨拶もそこそこに、葉月は今読んだばかりのニュースを熱を込めて語り、読んでいた記事を近づいて来た修平の目の前に差し出した。 「らしいね。任天堂が出資しているナイアンティックが制作したのに、アメリカやオーストラリアで先行リリース、なぜかポケモン本家の日本にはまだ上陸していない」  修平はウェイターにワインを注文してから葉月の隣に座り、差し出されたネット記事を読みはじめた。 「ねえ修平さん、自分の住んでいる街にポケモンが現れるって最高だと思わない? 家の中とか、公園とか、それに通勤する途上でもポケモンに逢えるって、感激モノだわ」  英文を翻訳したらしいアメリカ発の記事には、実風景を背景に撮影された可愛いポケモン出没写真をはじめ、公園や街角でポケモンGOに熱狂する人々の写真が何枚も掲載されていた。  葉月も記事を読みながら思わず興奮し、遙か彼方の国での熱狂に感染してきたのだった。  葉月のスマホを読んでいた修平は、何やら次々と調べ始めた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加