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前に、子供の頃は本よりポケモンゲームの方が好きだった、と修平が語っていたことを思い起こし、葉月は提案してみる。
「ね、このゲームが日本でリリースされたら、一緒にポケモン探しに行きましょう!」
修平はポケモンの名前を全部覚えたポケモンマスターだそうだから、きっとポケモンの解説をしてくれるだろうし、これは恋人と街歩きしながら楽しむのに最適のゲームに違いない。
街で一緒に宝探しするみたいで、葉月は早くも心が浮き立ってきた。
修平はようやくスマホから顔を上げると、真面目な表情でコメントした。
「これはひょっとして起死回生策になるな」
「えっ? 何の?」
意図がつかめず葉月が尋ねると、修平は眼鏡の奥で瞳を煌めかせた。
「書店業界の、だ」
ポケモンはゲームであって、本ではない。いや、ポケモン図鑑とか解説本はたくさんあるに違いないから、それを売ろうということだろうか。
葉月が考えていると、修平が続けた。
「これだよ! ポケモンが現れるところ、ポケモンを捕まえるのに必要なグッズを売るポケストップ、ポケモンを競わせるジム。一挙に集客するのにこれほどうまい手はないだろう?」
「それって、ポケストップになって書店に人を集めよう、っていうこと?」
葉月が頭を働かせると、修平がにやりとした。
「その通り!」
「でも、ポケストップとかジムは名所旧跡や博物館、公園とか、誰もが入れる公共の場にセットしてあるらしいじゃない。
ポケモンは自宅やオフィスにも現れたって書いてあるから、ひょっとして本屋にも出没してくれるかもしれないけれど、ストップになんてなれるのかしら」
「金を出せばいい、って記事に書いてあっただろう? ピザ屋が10ドルを支払ってポケストップを導入して売り上げを75パーセント伸ばした、って。
同様に、書店もゲーム会社にポケストップとして登録してもらう。或いは、白鴎堂の場合だったら、提携して入居してもらっているサンダースコーヒー・チェーンに登録してもらう、とかね。
交渉次第だろうけれど、うまくいけば相当な集客ができるさ」
修平の提案を聞いているうちに、葉月にもポケモンGO人気にあやかった販促が見えてきた。
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