ポケモンGO番外編

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 修平が見せてくれたニュース速報を読み、葉月も溜息をついた。  先日、白鴎堂書店をポケストップに登録してはどうか、と大沼店長に提案したところ、経費がかかる販促は今の財務状況では到底無理だと却下されてしまった。  しかし店長もニュースでポケモンGOの海外での熱狂ぶりを聞いており、アイデアとしては面白いので上層部の会議にかけ提携先のサンダンスコーヒーに一応提案してみるとのことだった。  もしサンダンスコーヒーがスポンサードロケーションになってくれたら、カフェを店内に擁する白鴎堂もその恩恵にあやかることができるわけだ。  しかし、どうやら現実は既にシロウト考えの一歩先を進んでいるらしい。 「やっぱり大手チェーンは動きが早いわね。 サンダンスコーヒーに提案したのかどうか、大沼店長からはまだ結論を聞いていないけれど、マックが交渉しているということは販促費用が相当かかるのだろうし、中堅のサンダンスだと無理かもね。 あーあ、これでメルへンの笛吹戦略は失敗かしら」 「いや、まだそうと決まったわけじゃない」  修平がいかにも自信ありげな顔をしたので葉月は尋ねた。 「それって、サンダンスコーヒーが巻き返せる、っていうこと? それとも、ポケモンGOは複数の飲食チェーンと交渉するかも、っていうこと?」 「いや、サンダンスチェーンとしての集客は難しいかもしれないけれど、白鴎堂お茶の水店はポケストップになる可能性が高い、ってことさ」 「どういうこと?」  葉月は出されたラーメンの麺が伸びるのも忘れて修平の顔を見つめた。  修平によるとポケモンGOを開発した会社はすでに「イングレス」というバーチャル・リアリティーの陣取りゲームを日本で発表しており、そのゲームで使われたポータルがポケモンGOのストップになるらしいと噂されているそうだ。 「で、白鴎堂お茶の水はイングレスのポータルになっている」 「なんでうちが?」と葉月が驚いていると、修平が笑った。 「入り口にあるオウムのおかげさ。老舗の白鴎堂はビルが古くてファサードにオウムが彫られているだろう?  イングレスはああいったユニークな石の彫り物が好きなんだ。河童やキューピッド、ドラゴンや鹿の角、それにサークル石とか。そういうランドマークがゲーム的って考えられているみたいだ」  
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