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「まあ、有森君が言うことにも一理ある。しかし、うちとしては出版社からのクレームは避けたいから、本や雑誌の表紙や中身の撮影は禁止、と注意書きを付ける必要があるな。
それと当たり前の話だが、他の客の写り込みは禁止。ポケモン写真は通路か外で撮ってくれ、ということにならざるを得ない」
店内の通路はともかく、店の前で写真を撮ってもらっても来店数の増加には繋がらない。
ミーティングはしばらく写真撮影の是非を議論し、結局店長の鶴の一声で写真撮影の限定的解禁となった。苦情が出たらそれはそれ、後で善処すればいいとの判断だ。
ポケモン写真コンテストが承認され、葉月は提案を続けた。
「入り口にポケモン関連本を並べて集客を図りたいと思います。夏休みですから、子供や学生が足を止めてくれるようなポケモンやコミック中心のレイアウトを考えましょう。
海外のニュースではポケモンGOは親子で楽しむ人が多いそうですから、子供を持つ親達が関心を持つような本、例えば、夏休みの自由課題に役立つ本、キャンプやビーチ等、夏遊び関連本も周囲に配置してはどうかと考えます・・」
異論はあったが、先月も販売額が前年同期比5パーセント割れのお茶の水店としては、世界的ブームを巻き起こしているポケモンGOの人気にあやかる販促を、という葉月の提案を了承したのだった。
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ポケモンGOがいつ来るか、スマホを前に待機する動画までネットに流れて大騒ぎしている中、7月21日にゲームがやっと配信された。
待っていました、とばかりに葉月はポケモンGOをインストールし、修平が予測していたようにお茶の水店がポケストップになっていることを確認した。
「修平さん、これってスゴイ! 歩き廻らなくてもオフィスでモンスターボールを入手できちゃう! ポケモンも現れた!」
葉月がさっそくラインで修平に連絡すると、彼が折り返してきた。
「ポケスポットが確認できたら作戦開始だ。ポスターを張って、ルアーモジュールを焚いてポケモンをおびき寄せる。
ポケモンがいる、という評判が立てば客が増えるし、熱心な客がルアーモジュール焚いてくれるから、後はみんなに勝手に遊んでもらえばいいわけだ」
了解、と葉月は応じ、用意しておいたポスターを正面近くの壁に張り始めた。
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