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制約とは、まず目立たない場所で、駅前は不可、付近に民家がない。など、十項目程度あった。近くに民家がないうえに、駅前でもないとすると、山の中か、田の中か、とにかく辺鄙な場所しかない。
生葬社のあった場所は、葬儀屋が固まっていて、本当に民家は無かった。
出社する会社がないので、自宅待機になっていたが、百舌鳥が丼池家に来ていたので、ここが生葬社のようになってしまった。丼池家は広いので、美奈代は一部屋、生葬社専用に貸してくれた。
「早く、引っ越し場所を探さないとね……」
生葬社は、借りるはできても、買い取るという事は出来ない。会社組織ではないので、資産を持たないのだ。全て、リースなどで賄っていたので、爆破による損失は、リース時の契約により保険を適用する。つまりは、同等品が用意される。
問題は借りる部屋であった。
「連絡すると断られる。爆破された会社というのが、ネックだよね」
百舌鳥は、簡易的に用意した机に向かって
不動産情報を見ていた。
そこに、鹿敷から電話が掛かってきた。
「儀場から聞いた。俺の物件を貸すよ。多分、生葬社の予算範囲で済む。間取りを送った」
百舌鳥の端末で開かれた、部屋の間取りを一緒に見てみる。それは、三階建ての一軒家で、一階当たりの面積は、今までのフロアよりも狭いが、三階まで使用可能となっていた。三階まで足せば、それなりの面積になる。
地理的条件が悪いのかと、地図情報を見ると、今の生葬社と駅からの距離は変わらない。
正面が、寺社の共同駐車場で、ここは見た事があるが、観光バスが三十台は止められる大きなものであった。
そのバスの出入口から、逆の方向にあるのが、この建屋であった。寺院の横の路地を線路際まで入った場所にある。線路沿いには、細い道が一本あるが、それを挟んですぐに線路であった。かなり、電車がうるさいので、確かに民家はない。線路沿いの細道には、飲み屋と居酒屋があったが、他は時間貸しの駐車場になっていた。
道路事情は悪いが、駐車場も付いてくるという。
でも、これでは家賃が安すぎる。俺は、昴と顔を見合わせると、事故物件で検索してみた。
「鹿敷さん、この場所。倒産五回、火災一回、自殺三回の発生地ですね」
「そう、だから格安。生葬社は倒産はしないし、幽霊も平気だろう」
倒産を苦にした自殺が二回。失恋が一回。どれも、一階で同じ場所であった。
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