『僕は君の名を呼ぶ』

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 倒産は、ここで喫茶店や、雑貨屋、土産屋は無理であったと分かる。まず、不快な土地では物が売れない。何が不快であるかというと、後ろ向きのバス。排気ガスが常にかかるし、車の後ろは怖いというイメージも重なり、その方向に行きたくはない。  細すぎる道、車一台がやっとの道は、詰まってしまいそうで怖くて入れない。実際は、すれ違えるのだが、やはり細くて怖い。  でも自殺の多さが気になる。 「鹿敷さん、下見に行ってみます。部屋の鍵を貸してください」  どうして鹿敷の持ち物なのかというと、格安で売りに出されていたのを購入し、家族葬などの小規模の会場を、そのビルに置こうとしたが、全員に反対されたのだそうだ。幽霊の目撃が多く、職員が行きたくないと、反対していた。 「いいよ。夜には行くなよ」  肝試しではないので、夜に行くつもりはない。  四人で、丼池の車に乗り込むと、まず鹿敷の会社に行き、鍵を受け取ってから、該当の場所に行ってみた。  周囲を車で走ってみると、寺社横の細い道から入らなくても、駅前のロータリーから、スポーツクラブの駐車場に入るようにして進むと、建物横に出ていた。スポーツクラブの駐車場までは、しっかりとした二車線の道なので、その先数メートルで借りられる駐車場に入る事ができた。 「道は問題なし」  駐車場に車を止めると、まず建物の外観を確認する。真四角に近く、白い建物であった。建物自体に不吉な感じはない。  入口のドアを開けてみると、中には前の持ち主の棚などが散乱していた。  これは何を売っていたのであろうか。ショップの袋はあるが、品物は何も残っていない。  三人は、皆、ドアで首を吊っていた。道路を背にして、店内を見るように、首を吊っていたという。 「丼池君……」  電車の度に、窓がビビビと響く。 「そうですね。まず、ここは天井まで高さはありますので、床を上げましょう。道路と部屋との高さの差をつけます」  電気の配線なども、全て床で処理できるようにする。また床暖房に切り替える。 「道路と建物までの距離が短い。ドアの先は道路では怖いですので、いっそ、内側に開くドアにしてしまいます」   壁が薄いのか、電車の音もよく聞こえていた。これは、壁の防音が必要であろう。線路側の窓を止め、駐車場側に集中して窓を配置した方がいいのかもしれない。
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