第四章 赤い花 白い花

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 やはり、俺は、丼池に後悔して欲しくない。 建築家として、一流になって欲しい。 すごい建物を設計したり建設しなくてもいいが、 古民家の再生では丼池が世界一だと言われるようになって欲しい。  社用車で行こうとすると、丼池は自分の車に乗っていた。 「丼池君、社用車があるから、それでいいでしょ」 「それ、遊部さん以外、運転できませんよ。難し過ぎる」  確かに、それは丼池の意見が合っている。  丼池の車に乗り込むと、 俺は、丼池が情熱を持って俺の実家を見ていたことで、 両親も実徳もすごく喜んだ事を告げた。 「古い、悪いとか遅れているではないと、世界中に言って欲しいよ」 「それは、続けていきます。でも、少しだけ分かってください。 生葬社で遊部さんと出会ったからこそ、俺は生き甲斐を見つけたのです」   どうしょうもなくなっていた丼池家に、光を入れてしまったのが俺なのだという。 昂は眠ったままであった。 丼池は、親のために、子孫を残さなくてはと思いつつも、男性にしか興味はなく、 罪悪感に打ちのめされていた。
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