第五章 天井の空

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 病院の中に入ると、どこかひんやりとしていた。 古い病院のせいか、やや内部が暗い。 患者の作った、絵や手芸の美術作品が展示されているが、 それが、何故か怖いという思いに拍車をかける。 ここは、まるで、大きな墓標のようであった。 明るく清潔で、どこか理科系の研究所のような、最近の病院のほうが俺は馴染み易い。  廊下を歩いていると、上の看板が揺れていた。 エアコンの風で揺れているのか、八の字型に揺れ続ける。  救急車の音が、遠くで途切れる。 そのまま歩いていると、救急搬送センターに入ってしまった。 救急搬送センターには、沢山の人がいた。この病院で、一番人が多いのかもしれない。 皆、不安そうに名前を呼ばれるのを待っている。  俺もベンチに座ると、様々な声を聞いていた。  台所で倒れていた、公園で遊具から落ちた、原因は様々であった。
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