Terrible horror

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 夏になると鬱になる。小さい頃はそんなことなかったのに。じりじりと肌を焦がすような熱源を睨み返すことも出来ず、私はただ嘆息した。 「夏休み、どこに行く?」 「やっぱ海でしょ。キラッキラな海で泳ぎたい!」 「海なんて行ったら焼けるって。外に出るなら夜に花火とかさ」  八月を間近に控えた大学のキャンパスは、浮かれた学生たちの会話で持ち切りだ。その会話の輪に入ることはできず、私は賑やかな学生から目を逸らす。  夏、海、花火、青春。  別に友達がいないわけじゃない。ただ、誘い誘われる関係にはまだ踏み込めていないだけで。所詮は同じ学部の、同じ講義を取った間柄。大学一年生なら出会ってまだ数カ月だ。高校生みたいに四六時中同じ空間で授業を受けるわけじゃない。サークルだってそんなにアクティブじゃない。私はまだ、この「大学」という仕組みに慣れていないのかもしれない。  ……まあ、だからどうだって話だ。
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