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「今日はちょっとトレーニングに行かない?身体が鈍るし、前回の反省会もしてないし」
珍しく妹がそう言うので、支度をして職場に向かう事にした。
「般若がヘコんでて元気ないからね、こういう時は別の事に打ち込むのが一番だと思って」
「……はは」
言葉は悪いが妹の言わんとする事は理に適っている。
「あのね、ちょっと気になってる事があって……」
頭を仕事モードに切り替えると犬螺眼の事を相談しようと思い、妹は別として私のは残虐性もあり心配の種の一つだ。
「眼の事?誰に聞くの?」
「瑠里も俊敏になれていいとは思うけど、ぶっちゃけ皆殺しにしてるでしょ?ちょっと怖くない?」
「……まさかお主、悪魔に聞きに行くとか言い出さないだろうな」
すぐに見破られてしまったが、妹の表情からすると『私は行かぬ』と言ってるような気がする。
「本当ならキツネとか田村さんに聞きたいけど、凱に聞くしかないかと」
「まぁ待ちなよお嬢さん、まずは田村さんに相談してからでも遅くはあるまい?」
時代劇の見過ぎで言葉が町人風に変わっているが、瑠里が行きたくないのはさておき、田村さん達に相談しないと凱の住処すら知らない。
受付に木村さんの姿はなく、代わりにつなぎを着た男性が立っているのをみると今日はここで何かありそうだ。
男性から着替えを受け取り、ロッカーで支度を済ませると双棒をもらいに受付に戻った。
「ごめんね~、ちょっと昇格試験の片づけしてて。トレーニング?」
「木村さんおはようございます!今日って試験だったんですね」
双棒を受け取ると他愛もない会話を交わし、指示された部屋を使わせてもらう事にした。
特に洋について聞かれる事もなく、私達もあえて口には出さず通路を歩き出す。
一つ手前のドアのガラス部分からキツネ…いや社長がテーブルに座り、深妙な顔つきで何かを食べてる姿が見えた。
新作の試食なのか休憩なのかは分からないが、姿を見た以上挨拶するのが普通だが、ノックしてまで入っていいかは分からない。
まして相手はキツネなので下手に声をかけてトレーニングに参加して来てもかなりウザい。
「――どうする?」
立ち止まり一応妹に合図したが、手を交差してバツ印をされてしまった。
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