別れと出会い

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「後……つけて来るよ」 「知らんぷりしとけば?入ったらすぐに鍵かけとこう」 部屋は隣なので素早く動けばキツネを巻けると思っていたが、そう甘くはなかった。 「姉妹で避けんでもよかろう?年寄りは優しさを欲しておるんだって!」 自動開閉の大きなドアなので、閉まる前に容易く入って来られた。 「私達にどうしろってゆーんですか!気の利いた言葉なんて知りませんよ」 妹が呆れた顔でそう言うと、ウジウジとイジけたように口を尖らすキツネ。 「仲間っていいな、家族みたいでいいなとか改めて思いたい時ってなぁい?」 「いえ、私仕事をプライベートに持ち込まないタイプなんで」 妹がキッパリ言い切ったせいで、キツネの拗ねモードに拍車がかかる。 「みんなが冷~たい!ワシの心に~木枯らしが~吹く~」 『歌い出した!しかも自作だよ……』 床に座って大声で歌われると、反省会どころじゃないし邪魔になるだけだ。 どうせなら使った方がいいと思った私は、例の相談を持ちかける事にした。 「悩み事?やっぱ相談には年長者がもってこいだよね!犬螺眼についてはワシもちょっと心配しとったからの」 急に嬉しそうに顔を綻ばせ、丸くなって座るよう指示を始めた。 「やっぱり危険なんでしょうか?」 不安になりキツネの顔を見ると、首を横に振られた。 「双棒を使わない場合『仕留める』感じだからビジュアル的にも百合さんが耐えれず、イザリ屋を辞めると言われるのが一番困るが、凱に直接聞きに行かせる訳にもいかん」 「なんでですか!?」 前のめりになり訴えると、社長は穏やかな顔つきに変わる。 「あの悪魔は本当に危険で考えも読めない……が百合さんの事をヤケに気に入ってるみたいだし、帰して貰えんとか万が一殺されてしまった場合、ウチと正式に敵対関係になるからの」 「――殺される?」 さすがにそこまでは考えていなかったが、社長が説明をしてくれた。 凱が『一目おく』というのは、強いという事は必須条件で、尚且つ犬螺眼が使えるとなるとどう変化が表れるか見たくなり、自らが戦い出す危険性があり得るらしい。 まだ使いたてで敵わないのは直感的に分かるが、じゃあどうすればいのかと肩を落としていると、社長がドアに近づき内側からボタンを押した。 ゴゴゴと重たい音を立て左右にゆっくり開くと和音さんが姿を現した。
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