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「そう簡単にはいきません、凱は特殊なんで」
「そう……ですか」
少し怖い気持ちもあるが、コントロールの仕方を教えて貰えただけでも有難い話だ。
「とりあえずイザリ屋のメンバーが増えた事だし、コーヒーとパンで乾杯でもしましょうか」
社長が部屋を去ると妹はドーナツに目を奪われていて、ワオンさんはそっと耳打ちをしてきた。
「立花家のメンバーにも会いましたが、皆に『姉妹に手を出すな』と言われて大変だったんですよ」
「ワオンさんも違う意味で親族に目をつけられたんですね」
お互いに苦笑いをしていると、社長と一緒にトレーニングに来ていたのかリーダーも部屋に入って来た。
「アンタもイザリ屋に入ったんだってな、しかも俺のチームがメーンって本当か?」
「ええ、宜しくお願いしま……」
「言っとくが、月影姉妹には手ェ出すなよ?」
「そのセリフ……聞き飽きました」
そうは言っても今後組むのはリーダーなので、この二人には仲良くしてもらいたい。
「あと、救護でボンレスハムみたいな体型の啄ってのがいるから」
妹がそう言いコーヒーを渡すと、ワオンさんはぎこちない笑顔を見せカップを受け取った。
「では新しいメンバーに乾杯」
「乾~杯!」
小さな歓迎会みたいな空気だったが、全く知らない人よりは面識もあるし、洋みたいな穏やかなタイプでホッとしていた。
私にも新たな課題が出来たし、気合を入れながらあんぱんに手を伸ばす。
「手強いライバルになりそうじゃの」
社長が隣に来てニヤリとしたが、生憎私達は競争心など全くない。
「という事は、今年の大晦日のゲームは参加しなくてもいいんですよね?」
妹は全く違う話に触れ始めている。
「いんや、刺繍を持ったという事は新人扱いにならん……よって今年も大みそかのゲームも姉妹に決まりじゃ」
「えぇ――っ!」
そんな理由で『新人』が決められてるとは思わなかったので、瑠里と二人で不満の声が重なった。
お別れの後の新たな出会いに、少しだけ前進出来た気がしてなんだか嬉しく思えた。
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