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パッと見では完璧だと思えたワオンさんだが、指摘をするリーダーを見ると、さすがチームを纏めているだけの事はあると感心する。
「でも私らの時はそんなアドバイスくれなかったよね、ズルくない?」
「お前らは飛び抜けた化けモンすぎて呆気に取られたし、人の話を全く聞かなかっただろうが!」
思い起こせば見た事もやった事もない出来事の連続で、死にそうだった記憶しかなく、パン工場への異動願いを出したかった位だ。
「ここが無色らしからぬチームというのが良く分かりました、刺繍のチームよりずっとハードな場面に遭遇しましたし」
「そう?青刺繍の応援の時は死にそうになって、こんなチームには入りたくないと思ったけどね」
「確かにここは般若や大蛇がいる分、普通のチームじゃないかもな……じゃっお疲れ!」
言い返す隙を与えないよう、逃げるように帰っていく啄。
リーダーはトレーニングして帰る筈なので、私達も食べ終わったら部屋を出ようとコップを片付けに入っていた。
バンッとドアが勢いよく開くと、木村さんが焦った表情で中に入って来た。
「ごめん、ヘルプして!」
声のトーンで皆の顔つきが変わり後に続くと、説明を聞きつつ受け付けに向かった。
「暁刺繍の執行で怪我人が出たの、被害は増えてて滋が現場に向かってる」
「敵は何なんですか?」
妹が間髪入れずに聞くと、木村さんはリュックを準備しながら答えてくれた。
「鎌いたち、何度も行ってるのに……どうしたんだろう」
「無色で太刀打ち出来る相手なんですか?」
名前を聞くと強そうだし、足手纏いになりそうな気もする。
「悟は救護班のヘルプで、啄も呼び戻すから百合達は様子見に行って、すぐに他も現場にやるから」
様子見に行くと言われると嫌な記憶が蘇るのは、本当に見に行くだけでなく大抵何かに巻き込まれるからだ。
「お、お腹の具合が……」
妹が白々しい小芝居をうってみたが、リュックを背負わされ引っ張られるようにパネル部屋に連れて行かれた。
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