別れと出会い

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「そこなら犬の世界とも近いので噂を聞いた事あります、瞬時に鎌で斬り刻む恐ろしい集団がい……」 「やだぁ、ワオンったら何言ってるの?私は知らないわよ、皆気をつけて行ってらっしゃ~い」 気が進まないのに背中をグイグイ押され、無理矢理門を潜らせられた先は、背の高い草が生い茂る暗い草原だった。 細い道がありリーダーが先頭で歩き始めたが、すぐ先には道が二本に別れていた。 「右に行けば救護班と出会える筈だ、ここからは注意して動かないと鎌イタチは姿を見た時には死んでるとか聞いた事あ……」 「リーダーこそ気をつけて下さいね、私達はこっちの道行くんで」 「お前ら!人の話聞いてんのか!」 「私らは救護のとこじゃなく、様子を見て来いって言われたので」 瑠里が先頭になり左の道を歩くと、草むらに一歩入った時から辺りは血の匂いが充満している。 特に私達が進む方向からはキツイ匂いと殺気立つ気配が感じ取れる。 今までなら回れ右をして帰っているが、何故か足を向けたい変な気持ちと、行かなければならないという義務感が頭の中を占領していた。 「瑠里……稲膜頑丈にしといてね、首が飛ばされるとか絶対に嫌だもん」 「分かってるって……ん?なんか広場に出た」 ライトは足元だけを照らしているので後は気配を感じ取って歩き、私は妹のリュックを掴みワオンさんは背後を警戒していた。 三人で並んでみると芝生のような低い草が一面に広がり、サッカーが出来そうな場所に出ていた。 見晴らしはいいが木が所々に生えているのと、夜風に乗って血の匂いが左側からしてくる。 「試しにさ、ブーメランでも投げて反応見てみる?」 妹の提案で双棒からブーメランを出しちぎっていると、ワオンさんが目をパチパチさせながら『何スカそれ?』という顔をしていた。 一歩前に出て気配のする方に思い切り投げると、いつも通り綺麗に弧を描いたが、途中何かが微かに光り金属がぶつかる様な音がした。 真っ二つに割れたブーメランはそのまま落下し、血の気が引く思いで呆然として見つめていた。
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