青刺繍の応援

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妹の隣に並び敵が姿を現すのを待つと、宙を静かに浮いた田村さんとキャップを被ったつなぎ姿の男性が、青白い光を放ちボンヤリと見えた。 「――田村さんっ!」 妹が声をかけたが顔も青白く映って見え、生きてるかどうかも分からない。 「雑魚の分際で可愛い子供達をこんな目に……タダで済むとは思ってないだろうな、身体を少しずつ引き裂いて楽には殺さぬぞ」 二人の背後から声はするものの姿はよく見えず、ただ隙間から血のように赤く光る不気味な瞳が覗いてるだけだ。 「他の連中を集める為にお前達にも協力してもらおう……いや、もう来てるな、まずは膝まづけ」 話をしているカマキリがボスだとしたら、もう一匹と手下も近くに居る筈だ。 人質が二人に増えているって事は、敵も全部集まっているのかもしれない。 「姉さん……あのカマ何て言った?」 「はあっ?聞いてなかったの?膝まづけだって」 「ボソボソした声で聞き取りにくいんだよね、田村さん大丈夫かな……死人みたいに見えるけど」 話をしていると、遠くから白い糸のような物が飛んで来て、妹の手首に巻きついた。 「ゲッ!なんか飛んできた、気持ち悪い……」 「さっさと膝づけ!そのままの状態で首を飛ばすぞっ!」 他の木の間から苛立った声が聞こえ、恐らくそれがもう一人のボスだと勝手に思った。 「痛っ……!」 巻きついた糸が締まっているようで、妹が顔を歪め地面に倒れると、必死に外そうと頑張っている。 「――瑠里!」 直後こちらにも糸が飛んできたが、目の前でパンッと弾くと消えていった。 「……おい、妹の糸外せや」 木の陰から糸を飛ばしたヤツに近づいて行くと、追加でシュンシュンと白い物体が飛んできたが、パンッと水風船が割れたように音を立てて消した。 「な……なんだ、お前は!」 陰に隠れていたカマキリ人間が姿を現した瞬間、私の苛立ちは頂点となった。 ブシャッと音がしたかと思うと、首から上が破裂して体液のような物が飛び散っていた。 そのまま田村さんの方を向くと、静かに歩みを進めていく。 「田村さんを……離せ」 自分でも分かっているが、目の回りが少し熱くなり懐かしい感覚で、犬螺眼が出ているのは言うまでもなかった。
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