308人が本棚に入れています
本棚に追加
/185ページ
時計を確認して、まだ時間があるなと思い、リストを捲っているレイに話かけた。
「なぁ、レイ....」
「なに?」
「......いつまで隠しているつもりなんだ?」
ピタッ、と。
レイの紙を捲る手が止まった。
今どんな顔をしているのか、顔を俯けているためわからない。
「あいつはまだ探しているんだぞ。顔も分からない、共に育った“兄弟”を──」
“兄弟”
その言葉が出た途端、レイの身体が微かに震えた。
徐に顔を上げ、俺に視線を寄越す。
その綺麗に赤い瞳には酷く悲しげな色が揺れ、今にも儚く消えてしまいそうだった。
「......ま、だ...探してたのか、リューのやつ....」
バカだなぁ......
小さく漏れたその言葉はきっと気のせいじゃないだろう。
レイがもう一度顔をふせ、次に上げた時にはさっきまでの悲しげな表情は消え失せていた。
その事に胸の奥が痛んだ。
ったく、まだ子供のくせに、妙な所で強くなりやがって。
俺に真っ直ぐと視線を向けたまま、レイは口を開いた。
そこから紡ぎ出された言葉は予想できたもので。
痛くなる胸に、俺は目をふせた。
そして、この繰り返される問答にいつも思う。
なぁ、レイ。
それはあまりにも....
──あまりにも、残酷すぎやしないか?
―ギルバートside end―
最初のコメントを投稿しよう!