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あー、クソッ!
こんな捨てられた子犬の様な顔を見せられたんじゃ、見捨てられるわけがないだろ。
隼人の過ぎた正義感は確かに厄介な時もある。
後先考えずに人助けをして、その後始末をするのは結局俺だ。
だが、こいつの人を助けたいって気持ちは本物。
だから厄介なんだ。
そういう所が嫌いになれないから、結局放っておけない。
俺が、
「隼人っ、掴まれ!」
このお人好しを。
俺は今にも魔法陣に呑み込まれそうになっている隼人に手を伸ばした。
確かに掴んだのを確認して、おもいっきり引っ張り上げる。
・・・否、上げようとした。
「うわぁっ!何これっ!?」
俺達が這い出ようとしているのがわかったのか、魔法陣から黒い影みたいなのが出できてそれは俺達に絡まり、ものすごい力で引きずり込んだ。
「・・・雪っ!」
「・・・ッ」
黒い影に呑み込まれながら、隼人が俺の名前を呼ぶ声がする。あと少しで意識が闇に沈みそうになった時、なぜ、と疑問に思った。
何故、俺はあの魔法陣の文字が読めたんだろう。
見たこともない、文字のはずだったのに---
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