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「さて、本題に入るぞ」
本題?
それって、俺がどうなったのかとかいろいろ説明してくれるってこと?
「ああ。それと敬語は必要ない」
・・・はぁ、そうですか。
なんかもう今更な気がするけど、まあいいっか。
それじゃあ遠慮なく。
いつの間にか用意されていた椅子に座って邪神に向き直る。
邪神は少し険しい顔をしながら話しだした。
「お前は一条隼人に巻き込まれ、一緒に異世界に行く予定だった」
だった?
「じゃあなんで俺はここにいるの?」
「それは、お前の魂が関係してくるからだ」
「・・・魂?」
魂って・・もうなんかいろいろ考えるのも面倒臭くなってきたな。
俺の目が死んでいくのにも構わず、邪神は続けた。
「時々、見る夢があるんじゃないか?」
その言葉に俺の心臓が大きく鳴った。
嫌な冷や汗が背中を流れる。
時々見る夢とはあれのことだ。
地球とは異なる世界。
地に転がるたくさんの屍。
そこからひろがる鮮やかな赤い血。
その屍には人間と異形のモノが混ざっていてーー
思い出す度、身体が震えた悪夢。
「もう薄々気がついているんだろう?
お前が地球とは違う、異世界の住人だったことを」
「・・・住人?
あれは、あの夢がもし本当ならそれは俺の前世とかそんなことでしょ。今の俺には関係ないと思うけど」
俺の言葉に、邪神はゆっくりと首を横に振った。
「前世なんかじゃない。“今”のお前が実際にいた」
「今の、俺・・・?」
ああ、身体が震えそうだ。
嫌な予感が沸々と湧き上がってくる。
それが本当ならあの光景を生み出したのが俺で、実際に手を血でたくさん染めていたというのか?
前世の記憶とかではなくて?
そんな俺がずっとお前の隣にいたのか?
なぁ、隼人・・・・
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