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「ふふふ、ふふーふふーふーん、ふふーふふーふーん♪」
高橋が鼻唄を歌いながら、軽快に自転車のペダルを踏む。
ぼくはその背中を見ながら、黙ってチャリを漕いでいた。
「ふふふふーん、ふふふーふーん、ふふーふ、ふふーふふふーふふん♪」
季節はお盆も間近の夏真っ盛り。入道雲が浮かぶ空には威張り顔の太陽が鎮座し、地球を焼き尽くそうと熱い視線を落としている。
「ふーふーふふーん、ふふふふふーふふーん♪」
端的に言うと、めちゃくちゃ暑い。なんで高橋がこんなに元気なのか、皆目見当が付かない。
「ふーふーふふーん、ふふーふふーふふーん♪」
額から、頬を伝った汗が、顎からぽたりと滴った。
駄目だ。死ぬ。このまま外にいたら、全身の水を喪って死ぬ。
「……」
不意に鼻唄を止めた高橋が振り向いた。
きりりとした顔で、ぼくに言う。
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