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「私の作品第一号なんだ」
夏空の下、神社の日陰。隣に座る千夏が言った。
頭には、見慣れない狐の面。
「その狐面か。いつもはじいさんに教わりながらだもんな」
「うん。どう…かな?」
「似合ってるよ。子どもみたいで」
「誰が座敷童子か!」
「言ってねえし、それなんか違くね」
「え、そう?…じゃなくて!」
「わかってる、初めてにしては上手くできてるじゃん」
「あ、うん…ありがと」
「千夏はじいさんの跡を継ぐのか」
「うん、おじいちゃんが大事にしてきた家業を、私も守りたい」
「そうか」
「竜介は進学でしょ?」
「まあな。向こうで教員の勉強したいから、一人暮らし始める」
「そっか、じゃあ卒業したら別々だね…」
ふと、コンビニで買った2人分のアイスが目に入る。1つを差し出し、千夏に言う。
「…ん」
「え…?くれるの?」
「約束。戻ってきたら俺にも作って。千夏特製のお面」
「…うん。約束ね」
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