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「それに、彼女はそこらへんの人とは全然違って飢え死にしそうになった俺を助けてくれたほどの優しい人です。信用しろとは言いません。だから、もう一度考え直してくれませんか?」
透麻の語る姿に組員たちはポカンとしていた。
燕も目を丸くする。
すると、朝霧は口を開く。
「蓮司。この子を組に置いてみないか?」
「あ、朝霧さん!?」
「それは正気ですか?!」
清四郎と朔と呼ばれた小柄な少年は彼の言葉に驚く。
「俺はいつでも本気だぞ?それに俺も彼女のまっすぐな眼が気に入ったからね。」
二カッと笑う
彼のその顔を見た瞬間。二人は何も言えなくなった。
「はあ…。」
「朝霧さんらしいっちゃらしいですけど…。」
彼らは抗議することを諦めてため息をついた。
「どうだ、蓮司?」
再び彼に訊ねた。
蓮司も二人と同じくため息をつく。
「俺が何言っても貴方は聞かないことぐらい分かってますよ。」
「それじゃ…!」
透麻は表情を明るくさせる。
だが、その時だった。
「私は貴方方には付きません。」
突然、燕の放った言葉に彼らは唖然とした。
「はあ!?何でだよ!」
清四郎は声を荒らげる。
「どういうことだ?」
蓮司は険しい表情で燕に訊ねる。
「貴方方の都合で、私がここに暗殺の人材として置かれるなんて納得いきません。それだけじゃない、私がすんなり入ってくれるなんて考え自体大きな間違いです。」
燕は冷静に彼に反論する。
「ちょっと待って!確かに君にとっては望んではいないことだけど、暗殺だなんて俺達はやっていないし何か勘違いをしていな…!」
すると透麻は首筋に冷たいものが突きつけられる。
それは燕の手に持たれた短刀の刃だった。
「私の主は、たった1人だけです。これ以上人に仕えるつもりは毛頭ありません。」
彼の目に映った彼女の眼差しは、先程とは比べ物にならないくらい冷たくまるで刃のように鋭かった。
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