第1話 町を訪ねて

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***** 「すみませんでした。」 燕は青年に腹を殴ったことを何度も謝った。 「そ、そんな!もう謝らなくても大丈夫だよ!元は君を驚かせた俺が悪いんだ!」 「でも…!」 言葉を紡ごうとしたとき、青年は人差し指を燕の口の前に出す。 「この話はお互い様ということでもうおしまい。いいよね?」 「…はあ。」 燕はポカンとしながら返事をした。 彼女が答えると青年はニッと笑った。 「いい子だね。素直が一番!」 「いい子って…。」 太陽のような青年の笑顔に少し眩しく見えた。 だが、子供扱いされるのが若干腑に落ちなかった。 「ところで、何故あなたはそこで倒れてたんですか?」 忘れそうになった肝心なことを訊ねた。 すると青年は苦笑いを浮かべた。 「実は、昨日の夜から飯食わないで仕事をしてたんだ。そしたら空腹で立っていられなくてさっきの状態になったわけ。」 「昨日の夜から食べてないんですか!?」 驚きのあまり声を上げる。 「倒れて当たり前ですよ!そんなに長い時間お仕事するのなら非常食を持つものじゃ・・」 「すぐ仕事が終わると思って持って行かなかったんだよ!まさか昼頃までかかるなんて誰も思わないだろ?!」 涙目で彼は燕の肩を揺さぶった。 (この人、先を読まない人だ…。) 呆れてものが言えなかった。 普通は兵糧ぐらいは持ち歩いているのにと。 「と、とにかく私のおむすびを1つあげますから泣かないでください!」 傍らに置いてあったおむすび1つを青年に差し出した。 すると青年は彼女の肩を揺さぶるのをやめ、目の前のおむすびに目を止めた。 「いいの…?」 「はい。」 燕は首を縦に振った。 青年は彼女からおむすびを受け取った。 「どうしよう…俺、夢を見ているのかな?だってここに綺麗なおむすびが…。」 「いいから早く食べてください。」 ブツブツと呟く青年に切り捨てるように言った。 「じゃ、いただきます。」 燕に言われ、青年はおむすびを一口食べた。
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