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「え、部屋が空いてないんですか?」
訪れた宿に部屋が空いていないと告げられる。
「はい、誠に申し訳ありません。」
「そんな…。」
その場にしゃがみこんだ。
仕方がなく燕は宿を出て、再び歩き出した。
「どうしよう…これで6件目だ…。」
他の宿も交渉したがほとんど部屋が空いていないと追い出されたのだ。
気が付くと辺りは暗くなっており、すっかり夜になっていた。
さすがに町の人は自分の家に帰っているのか町は静かだった。
「はあ…今日も野宿か。」
肩をガクッと落とす。
このまま宿を探しても同じ結果だと思ったからだ。
とぼとぼと町の中を歩く。
建物のあちこちからは賑やかな声が響いてくるのが聞こえてきた。
「明かりのついた部屋に家族…こうして家族がいつまでも笑える世の中だったらいいのに…。」
懐かしむ眼差しを笑い声が上がる建物に向けてポツリと呟いた。
「あの人もこんなこと言ってたっけ。」
昔、仕えていた主を不意に思い出す。
「いけない、もうあの人はいないんだった。」
目を逸らし、そこから逃げるように再び歩き出した。
しばらく歩いていると人気のない場所に辿り着く。
「…くしゅっ。」
夜の寒さに不意にくしゃみが出る。
「さすがに夜は冷え込むな…。なるべく寒さを凌げる場所を探さないと…。」
その時だった。
「ぎゃああああ!!」
「!」
突然男の悲鳴が耳に入ってきた。
「何さっきの悲鳴…?」
すぐに悲鳴が聞こえた場所へと向かった。
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