第1話 町を訪ねて

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その声は大きく、この場所からすぐ近くだと気づく。 角を曲がった瞬間、燕は息を呑んだ。 「…!」 目の前には無惨に斬られた血まみれの男が二人、地面に倒れていた。 「ひどい…誰がこんなことを…。」 顔を見上げた時、燕は目を見開いた。 視線の先には血に濡れた刀を持った中年ぐらいの男がこちらを見ていたからだ。 「女…?」 死んだような目で彼女を見た。 それを見た瞬間燕は確信する。 (辻斬り!) 彼の目で判断した燕は懐から短刀を取り出し構えた。 そして、男は彼女に刀を向ける。 「見たからにはこのまま生かすわけには行かないな…!」 呟いたとほぼ同時に素早く突進してきた。 刃を弾く音が大きく響く。 「くっ…!」 男の刃を受け止める。 (何これ…刃が重い!) そう思いながらも受け止めていた刃を薙払い、燕も突進する。 「はあっ!」 容赦なく斬りつける勢いで刀を突く。 だが、受け止められてしまう。 「ぐっ…!」 「どうした女?こんなものなのか?」 男はフッと笑う。 「っ…!」 一旦間を開け、再び刀を振り上げる。 「ふんっ!」 ガキィン! 「何!?」 また刃を受け止められてしまった。 「あー…弱い弱い。これが本気か!!」 「っ…!」 弾き返された勢いで頭に被っていた笠が宙を舞い、地面に落ちる。 「ほぅ…笠で見えなかったが、なかなかいい面してるじゃねえか。」 男は月の光に照らされた燕の顔を見てニヤリと笑う。 「女の顔を眺めてる暇なんて貴方にはあるの?」 「へっ。口を開かなければいい女なのに、これじゃあ台無しだな。」 「それはどうも。」 地面を蹴り、再び男に斬りかかる。 打っては弾き返され、突いても止められる。 予想以上に苦戦をした。 「はあ…はあ…。」 「く、くそ…女のくせに…。」 肩で息をしながら睨み合う。 「今度こそ・・・!」 一歩踏み出そうとした途端だった。 「くっ…!」 突然、両足に痛みが走る。 (まずい…長い道を歩いたせいで足が…!) 疲労のせいか、足は小刻みに震えていた。 「これで終わらせてやる!!」 男は燕に休みを与えまいと突進してきた。 (しまった!) 隙を付かれた彼女はぎゅっと目を瞑った。 その時だった。
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