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眠って何時間経っただろうか、障子が開く音で燕はゆっくり瞼を開けた。
「おはよう、良く眠れた?」
目の前にはあの茶髪の青年、透麻の顔があった。
彼を見た瞬間、昨日のことを思い出し素早く後ずさる。
「そ、そんなに警戒しないでよ!」
「ここまで連れて行かれて警戒しないほうがおかしい。一体何が目的なんですか?」
透麻を睨みつけながら訊ねる。
すると、彼はため息をついた。
「本当は逃がしてあげたかったけどね。」
「え?」
ポツリと呟き透麻はまた向き合う。
「君は俺たちの正体を知ってしまった。だからここに連れてきた。」
「あなたたちの正体?意味がよく分か…」
「とにかく、そのことを今から俺の仲間と話し合うから俺についてきてくれる?」
言葉を遮られ、燕は不安と苛立ちを持ちながら透麻についていった。
階段を下り、奥の部屋へ案内された。
そして、部屋の前に立ち止まる。
「朝霧さん、連れてきました。」
透麻は部屋の奥にいる者に声をかけた。
「ああ、入ってくれ。」
男の声が障子の奥から返ってきた。
「失礼します。」
返事が返り、透麻は障子を開ける。
部屋の中には昨夜会った清四郎たちと一吉、まだ出会っていない者が数人座敷に座っていた。
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