第2話 影狼組

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「そこに座って。」 透麻に指された場所に燕は腰を下ろした。 顔を上げると、目の前には優しそうな顔をした男が座っていた。 謎の男達に囲まれながらも燕は怯えることなく彼の顔を見つめる。 障子を閉めたことを確認すると男は口を開いた。 「君、いい眼をしているね。」 「!」 急に褒められ、燕は顔を驚かせる。 「あ、あの…。」 「ああっ、すまない。つい口に出してしまった。」 ゴホンと咳払いをし、再び向き直った。 「では改めて。初めまして、俺は影狼組頭領の朝霧秀弥という。」 「影狼組・・・!」 「影狼組」という単語に目を見開く。 ここに来る前に村の店主から聞いたことを思い出した。 燕の反応を見逃さなかった朝霧は小さく微笑んだ。 「やはり知っているようだね。まあ、それは置いておいて…昨日はうちの者が手荒な真似をしてすまなかった。」 朝霧は燕に頭を下げた。 背後から「ごめんね」と透麻の声が聞こえてきた。 「い、いえ…頭を上げてください。」 燕は頭を上げるよう言うと、朝霧は頭を上げた。 周囲は沈黙したままだった。 「あの、何で私をここに連れてきたんですか?あなた方に何をしたっていうんですか?」 一番肝心なことを訊ねた。 すると朝霧は優しい笑みから真剣な表情へ変えた。 「君は俺たちの正体を知ってしまったからだ。」 「正体…?」 二階の部屋で透麻も同じことを言っていた。 朝霧は横に座っている眼鏡をした男と顔を見合わせ頷きあった。 男は朝霧の代わりに言葉を続けた。
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