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「もう一度聞くが、お前は俺たちのことを知っているようだな。」
「は、はい。噂程度ですが・・。」
恐る恐る返事をする。
「ならば話は早い。」
眼鏡をした男は改めて燕を見る。
「俺たちは本来、影狼組であることを人に知られてはいけないんだ。その理由は、ここ「呉羽町」の中心に建つ「呉羽城」の隠密組織として手を組んでいるからだ。」
「隠密組織…。」
噂とは少し違っていた。
すると、透麻は立ち上がり障子を開けてみせる。
外には青い空の下に大きな城が見えていた。
「あそこが呉羽城。そこの城主の名は「三崎徹」といって、俺たちはあの人の隠密組織としてこの町を守っているんだ。」
透麻は城を見せながら説明を挟んだ。
「昨夜、この建物の表が普通の店だったでしょ?」
「え、ええ…」
燕は昨夜のことを思い出す。
「普段は正体を隠して甘味処を営み、そして便利屋として町の人の依頼も聞いているんだ。」
「隠密組織が便利屋を…ですか?」
聞き返すと、透麻は頷いた。
普通の隠密組織は正体を隠してもそんなことはしない。
「言っただろ。俺たちの仕事はこの町を守ること。だから町人を守ることも仕事のうちだってことだ。」
今度は清四郎が口を挟む。
「噂では平気で人を殴ったり殺したり、無粋な真似をする輩だって流れているが…。」
「殺したりはともかく・・・まあ、あながち間違ってはいませんよね。」
眼鏡をした男の言葉に透麻は困ったように微笑んだ。
「けど、仕事とは言っても俺たちは隠密組織。無闇に正体を明かしてはいけないんだ。」
朝霧は付け足すように言う。
そんなに見られてはいけないことなのかと燕は心の中で思った。
「それなのに、最悪なことに俺たちの本来の姿をお前に見られてしまった。これは見過ごせないことだ。」
男は険しい顔を向ける。
嫌な予感がした。
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