102人が本棚に入れています
本棚に追加
「だからここで選択しろ。ここで首を切るか、それとも…」
「ち、ちょっと待ってください!」
眼鏡をした男が言葉を紡ごうとしたとき、突然透麻は遮った。
「何だ透麻、まだ話しているのに口を挟む気か?」
「蓮司さん、今回は女の子なんですよ?しかも前みたいに秘密を漏らそうとする輩とは違います!」
必死に男に抗議をしてきた。
「だから何だ?俺には男だろうが女だろうが関係ないことだ。」
「この子は最初、俺たちが影狼組だっていうことを知らずに連れてこられたんです!」
「…何だと?」
男の眉はピクリと上がる。
「さっき彼女は言いましたよね?俺達を知ってるのは噂程度だって。昨日の夜、俺達と顔を見合わせても知っているような表情ではありませんでした。だから彼女に処分は必要ないと思います!」
「…。」
燕は彼の顔を見つめた。
「おい女、それ本当か?」
背後にいた清四郎は慌てた様子で燕に訊ねた。
「昨日の夜も言いました、私はあなた方が影狼組とは知りませんと。なのに皆さん、全然話を聞いてくれなかったので・・・。」
「何だよ、こいつは俺たちのことを知っていたのかと…!」
崩れるように身を縮こませた。
隣に座っている一吉は慰めるように彼の背中を軽く叩いた。
「てか、冷静に考えれば僕たちのことを知っていたら既に襲っているはずです。馬鹿なんですか、あなたは?」
「んだと?!」
小柄な少年に清四郎は噛みつく。
「ということは、今回は清四郎の勘違いだったということか。」
朝霧は苦笑いをしながら呟いた。
「申し訳ありません!俺が気をつけていればこんなことに・・!」
清四郎は座敷に額をぶつけ、土下座をした。
眼鏡をかけた男も呆れたように深くため息をついた。
「でも、何であなたはあそこにいたんですか?」
すると小柄な少年は燕に訊ねる。
彼に倣って朝霧たちも視線を移す。
「私は一晩泊まれる場所を探そうと道を歩いていました。しかし、偶然あなた方が追っていた辻斬りと会ってしまったんです。」
「ふーん…。」
興味のなさそうに返事をし、そのまま目線を外した。
最初のコメントを投稿しよう!