第3話 勝負をしよう

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「お前!」 清四郎と朔は立ち上がり、刀を抜こうとする。 「待って!清四郎、朔!」 一吉は二人の手元をしっかり掴む。 「離してください、一吉さん!」 「少し落ち着きなさい!」 「これが落ち着いていられますか!」 二人は必死に抗議する。 その時、透麻は首筋に突きつけられた燕の刃を素手で握った。 「!」 燕は彼の意外な行動に目を見開く。 「透麻さん!あなたは何を…!」 朔は瑠璃色の瞳を見開かせ、悲鳴に近い声を上げる。 透麻はまっすぐ燕の目を見つめた。 「は、離してください!」 燕は短刀を振り払おうとするが、透麻は離さないと強く刃を握る。 刃が彼の手の肉に食い込み、赤い血がポタポタと座敷に落ちる。 「透麻、やめないか!」 朝霧は彼に叫んだ。 しかし、透麻は一向に耳を貸さない。 「君は何か勘違いをしている。俺は・・・」 「離してと言ってるでしょ!血が…!」 「血なんてどうでもいい。」 澄んだ彼の目に燕の怯えた顔が映る。 「あなたは、一体何を・・・!」 「勝負をしよう。」 突然、透麻は口を開く。 燕は彼の言葉にポカンとした。 「え?」 「刀で勝負だ。」 急に透麻は刀での決闘を提案する。 「透麻、相手は女性だぞ!そんなこと俺は・・!」 「朝霧さん、すみません。少し黙っていてください。」 ピシャリと自分の頭領の言葉を遮った。 「朝霧さん、何言っても無駄ですよ。透麻はああなったら何も聞き入れません。」 朝霧の横にいる蓮司は呟く。 彼は黙って透麻を見つめた。
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