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「もし、君が勝ったらここを出て行っても構わない。だけど、負けたらどんな理由でも組に入ってもらうよ。」
燕は息を飲んだ。
さっきまでの彼の穏やかな雰囲気が一瞬にして鋭く引き締まっていたのだ。
(これが武士の姿…。)
彼の圧力に体に鳥肌が立つのが分かった。
だが、ここで逃げてはいけない。
燕はそう判断した。
「分かりました。その勝負、受けて立ちましょう。」
決意の眼差しを彼に向けて告げた。
周囲は驚いた目で二人を見た。
「おい、女!死ぬ気かよ!透麻とやるなんて死に行くのと一緒だぞ!」
清四郎は燕に叫ぶ。
「清四郎、何言っても無駄だ。好きにさせとけ。」
「蓮司さん…。」
蓮司の言葉に清四郎は黙って座った。
「そういえば、自己紹介してなかったね。俺の名前は朱月透麻。君は?」
「…七草燕です。」
「燕か、いい名前だな。」
透麻は小さく微笑んだ。
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