第3話 勝負をしよう

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「はああっ!」 「たああっ!」 木刀同士がぶつかる音が周囲に響く。 間合いを開けたり木刀を弾きあったり繰り返す。 しかも、二人の動きの速さは互角だった。 「な、何なんだよアイツ…!」 「あの剣豪と言われていた透麻の動きについていけるなんて!」 彼らの戦う姿を見た男たちは全員、目を驚かせる。 「もらった!」 透麻は燕の手首を狙い、木刀を振り下ろす。 「遅い!」 燕は彼の剣先を弾く。 「くそっ!」 「脇が開いてますよ!」 透麻の脇腹を狙うが、すぐに弾き返される。 「何っ?!」 「俺を甘く見ないで欲しいな!」 二人の動きは素早く、目も止まらぬ速さでぶつかり合っていた。 「あれが忍びの実力…!」 朔は目を見張ったまま呟いた。 透麻と燕は間合いを開け、お互い肩を上下に揺らす。 「まさかここまで、強かったとは思わなかったよ…!」 「私も、こんなに強い方と手合わせたのは久しぶりです…!」 二人は口角を上げ、言葉を交わす。 彼らの目はまるで、獣のような鋭い目つきをしていた。 「だけど、これで終わらす。」 「それはこっちの台詞です。」 お互い、ゆっくり木刀を構え直す。 そして、勢いよく地面を蹴った。 「てりゃああ!」 「はああああ!」 同時に叫声し、突進していく。 そして、ついに。 カラン… 木刀が地面に落ちる音が辺りに響く。 一同は息を呑んだ。 尻餅をつく燕の手には木刀がなく、その目の前には透麻の剣先が向けられていたのだった。 「…参りました。」 沈黙を破ったのは燕の降参の言葉だった。 彼女の言葉にさっきまで茫然としていた一吉はハッと我に返る。 「そこまで!」 声を上げ、透麻側に手を挙げた。 「勝者、朱月透麻!」 一本を取ったのは、先に燕に剣先を向けた透麻だった。
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