第3話 勝負をしよう

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「す、すげえ戦いだったな…!」 「…。」 勝敗は決まったが未だに男たちはポカンとしていた。 「ふう…。」 見事勝利を収めた透麻は木刀を腰に納め、一息ついた。 相当苦戦していたのか、彼の額には汗が滲んでいた。 そして、地面に座り込んでいる燕に向き直る。 「君の負けだよ、燕。」 彼女の前にしゃがみこみ、負けを告げる。 燕は透麻の顔を見上げ、彼の顔を見た途端困ったように口元を緩める。 「そうですね、私の負けです。」 フラりと立ち上がる。 「え?」 すると透麻は彼女の行動に目を見張る。 燕は懐から短刀を取り出したのだ。 それを見て透麻と男たちはハッとした。 「おい!何をするつもりだ!」 「よせ!」 燕が自害しようとするように見てたのか止めに入った。 「何がよせですか?」 「え?」 彼女の言葉に一同は目を丸くする。 彼らがおかしく見えた燕はフッと笑う。 「安心してください。今更自害なんてしません。」 「じゃあ、何で短刀を?」 自分の手に持つ短刀を眺めながら言葉を続けた。 「私は今まで、死ぬ場所を探しに旅をしていました。」 「死ぬ場所…?」 彼女に聞き返した。 「先程も言いましたが、私は忍。そして私の主は、ここに来る前に仕えていた御方だけ。ですが、その主がもうこの世にいないのならば護るものがない私は生きていても仕方がない。だから死ぬ場所を探して私も命を絶とうと思っていたんです。」 低いトーンで喋る燕に透麻は息を呑む。 「君は本当に死のうと思っていたの?」 彼女に問う。 すると燕は「はい。」と小さく頷く。
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