第1話 町を訪ねて

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「…さて、聞き込みを始めるか。」 足を再び前に出そうとしたその時だった。 「おい!この酒不味いじゃねえか!」 「どう落とし前をつけてくれるんだ?」 突然の大きな声に燕は足を止める。 とある酒屋で二人の男が店主に向かって声を荒げていたのだ。 「ひいっ!し、少々お待ちを!」 「ああん!?待てるわけねえだろ!俺たちを舐めてるのか!」 男は目の前の縁台を乱暴に足で蹴り飛ばす。 その衝撃で縁台の上に置いてあった酒器も辺りに散らばった。 「お、お許しを…!」 「許す?だったらてめえの金を全部出せよ?」 「そうしたら許してやってもいいぜ?」 店主を脅すような口ぶりで金を要求してくる。 「お、お金!?」 「そうだよ、金だよ。出さないならこっちから…いでっ!」 急に男の頭に石が当たったのだ。 「だ、誰だ!兄貴に石をぶつけた奴は!」 片方の男は背後の方を振り向き怒鳴る。 「すみません。町の皆さんが大変迷惑してたので、お止めしたほうがいいのかなと思いまして。」 男に石を投げた燕は彼らに強く言い放った。 「迷惑だと?こっちはな、不味い酒を飲まされたんだぞ?!」 「そうだそうだ!元はこいつが悪いんだ!」 怯える店主に指を指す。 その発言に燕はため息をした。 「お酒が不味いだけで暴れる…まるで子供のようですね。」 「んだと?!」 「誰がガキだこの女!」 気に障ったのか、男たちは眉を吊り上げ腰に下げてある刀を抜き始めた。 「キャーッ!」 「逃げろ!」 刀を見た人々は悲鳴を上げ、その場から離れる。 「お嬢ちゃん!俺のことは大丈夫だからこれ以上は・・!」 店主は燕を止めようとするが、燕は聞き入れず男たちを睨みつけたままだった。 「この野郎…ふざけやがって!」 1人の男は刀を燕の胸に向かって突いてきた。
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