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「お嬢ちゃん!!」
店主の叫び声と同時に肉を刺す感覚が男の手に持つ刀の柄に伝わってきた。
「へっ!俺たち武士に口出しをするからこんなことになるんだ!」
男は二ヤッと笑う。
しかし、それは束の間のことだった。
「な!これは!?」
刀の刃が刺したものは燕の胸ではなく、彼女が被っていた笠だった。
「兄貴後ろ!」
背後にいた男の声で素早く振り返る。
彼の目の前には燕の姿があったのだ。
(い、いつの間に!?)
男は驚いた。
だが、その隙をついて燕は男の首の付け根に向かって手刀を落とした。
「かはっ…!」
首にきた衝動で男はゆっくりその場に倒れた。
「あ、兄貴!」
背後のもう1人の男は叫ぶ。
「この野郎!許さねえぞ!!」
乱暴に刀を振り回しながら燕に向かって突進してきた。
すると燕は倒れた男の刀を素早く拾い、もう1人の男の刃を受け止めた。
「な、何!?」
「はあっ!」
力強く刃を弾き飛ばし、燕は男の腹に柄頭を突いた。
「ぐふぉっ…!」
彼女の攻撃で男は崩れるようにしゃがみこんだ。
人々はポカンとその光景を目の当たりにする。
あっという間の出来事だったのだ。
「く…くそっ…。」
腹を突かれた男はフラつきながらも立ち上がろうとする。
それを見た燕は彼の方に歩み寄り、地面に倒れた男の刀を刺した。
「ひっ…!」
恐怖のあまり、悲鳴を上げる。
男は恐る恐る燕を見上げた。
「武士であれば、このような場所で刀を抜く行為なんてしません。あなたたちは武士として失格です。」
氷のような冷たい目で彼らに囁いた。
「お、覚えてろよー!」
男は倒れた男を引きずりながら燕の前から去っていった。
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