第1話 町を訪ねて

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「終わるのはお前だ。」 凛とした声がゆっくりと燕の耳に入ってくる。 「ぐはっ…!」 気がつくと、急に首を突く音と共に男はその場にゆっくりと倒れていったのだ。 「…え?」 突然の出来事に燕は茫然とする。 「一体何が?」 倒れた男を見て、何が起きたかよく状況が理解できなかった。 「危なかったな。大丈夫か?」 ハッと我に返り、顔を見上げる。 目の前には凛とした顔立ちに短く切った黒髪の少年が立っていた。 「あ、はい…。」 腑抜けた声で返事をした。 「そうか…。」 「おい幸斗!そっち終わったか?!」 黒髪の少年の後ろ奥から焦げ茶色の短髪の青年がこちらに駆け寄って来た。 「ああ、こっちは終わった。向こうは?」 「もうとっくに終わってる。あとは縛り付けて奉行所の前に置いておけば…ん?誰だこいつ?」 青年は燕に気づき、幸斗と呼ばれた黒髪の少年に訊ねた。 「あ、あの…。」 「知らない。俺が来た時には既にいた。」 「ああ?さては辻斬りの仲間か?」 疑いの目で燕の顔を覗き込んだ。 「ご、誤解です!私は辻斬りじゃありません!」 「じゃあ何でここにいるんだよ?」 「それは偶然、この辻斬りと会ってしまって…。」 事実を述べたがまだ信じてくれないのか男二人は目をしかめた。 すると幸斗は口を開いた。 「あんた、その手に持ってる短刀は何?」 「え?」 少年の視線が指す方を辿ると、自分の手に持っている短刀に目が行った。 「やっぱりお前!」 焦げ茶色の髪の青年は燕を睨みつけた。 「違います!人は斬ってないです!」 彼女は必死に否定した。 「誤魔化しても無駄だぞ!幸斗、こいつも奉行所に届け…」 「その子は人斬ってないよ。」 突然背後から声が飛んでくる。 燕はゆっくり振り返る。 そこには茶髪の髪に朱色の瞳をした青年が立っていた。 彼の姿を見た燕は目を驚かせた。 「あ、あなたは…!」 昼間におむすびを与えた青年だった。 青年は燕を見てニコッと微笑む。 「やっぱりまた会えた。」 冷たい夜風は二人の間を吹き抜けていった。
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