③東校舎の屋上

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前の出入り口から教室に入ると、 すぐに西島はチラッとオレを見て、 人差し指を立て自分の唇に当てた。 (内緒ね) って唇が動いたように見えた。 オレは思わず下を向いて微笑んだ。 恋をする女子って可愛いなって思った。 諄太の事が好きだって聞いて、 オレは、ちょっとだけ嬉しくなった。 だからオレは諄太を思って顔が熱くなった。 諄太に視線を向けた。 そんなオレを諄太も見てたから 目が合って唇を横に引き軽く笑い掛けた。 諄太はスーっと視線を外した。 (え?) 何で… 胸がギュッと締め付けられる痛みに戸惑う。 配り終って席に付くと教科担任が入って来た。 諄太の態度が気になって、 諄太とエリカのひそひそ話が たまに聞こえて来るのも気になって、 でも 後ろを振り向けないオレ。 授業は殆ど耳に入ってこなかった。 昼休み、いつものように屋上でベンチに寝っ転がり空を眺めていた。 目の隅に貯水タンクが入り、 この間の諄太との事を思い出し鉄柱に視線を向けた。 溜息を吐く。 ドクンっと心臓が打つ… チャイムが鳴りオレはゆっくりと起き上がった。 諄太が来るんじゃ無いかと、 何処かで期待してた気がする。
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