1-3 現れる変態たち――姉2

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「おい! この馬鹿姉ぇ、離せ!」 「うにゅぅ~~……たっくんの匂い……幸せ~~……」  俺の髪に鼻を押しつけてくる。 「おい……マジでやばいんだって。このままだと漏れちまうから」  唯愛を振り払おうと暴れる。  しかし、がっちりと捕まってきていて、振り払えない。 「お姉さん……お姉様? お願いだから離して!」 「たっくん……たっくん~」 「う、うわぁぁぁぁ――――!!」  俺はその日、思った。家族サービスなんてしない。もう、絶対に。 ***** 「あ……危うく漏れるところだった……」  なんとか危機を脱し、トイレに行った後、部屋で溜息混じりに呟く。  この年でお漏らしとか、シャレにならんだろ。  しかし、唯愛は正気に戻った後、悪びれた様子も無く、それどころか、頬を赤らめては言った。 「漏らしても私がちゃんと、お掃除してあげるよ? お望みとあらば、この舌で舐めて……ね?」 「きもいから。寒気がする」  つーか、部屋から出てけ。俺を不幸にする疫病神め。  そのときちょうど、俺は時間を確認した。そして疑問を口にする。 「そういえば、母さん達は? ずいぶんと遅いけど」  俺はただ、何げなく聞いただけだった。  けれど、その返答は俺にはあまりにも突飛なものだった。 「帰って来ないよ?」 「え?」 「あれ? 聞いてなかった? お父さん達二人揃って、アメリカのほうの会社に出張で行っちゃったんだよ? 一年はそっちで過ごすって」 「……じゃあつまり、この家では俺と唯愛の二人だけ?」 「う、うん。そうだよ……ポッ」 「……絶望だ」  二人は職場婚だ。会社が同じで、帰ってくるときも二人で帰ってくる。  もう三十過ぎて、二人の子供がいてもなお、ラブラブとしている。  出会いを聞くと、それは入社式の日、 『!?』  二人は席が隣同士になったらしい。そして―― 『これは運命の出会い!』  とお互いに思って、そのままその日のうちに、籍をいれたそうだ。笑っちゃうよな。  さらに言ってしまえば、二人はその日に、第一子である俺の姉、唯愛を授かったそうだ。盛り過ぎだよな。
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