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普通の人間ならここで画面を隠すところなのだろう。
が、俺は隠すこともせずに、一回溜息をはいた後、睨みつけるように後ろを向いた。
俺の名前……島抜(しまぬき)巧人(たくと)をあんなふうに呼ぶのはあいつしかいない。
「なんだよ! 勝手に入ってくるなよ! びっくりするだろが!」
「まぁまぁ、姉弟でしょ。怒らな~いの」
うぜぇ……。
「あ! またこんなもの見て!」
そう言って画面を覗き込んでくる。
こいつは、俺の実の姉だが、俺はこいつのことが嫌いだ。と言うのも――
「こんなもの見なくても私が見せてあげるのに……もっと恥ずかしいと・こ・ろ」
後ろから抱き着いて、耳元で囁き、胸を押しつけてくる。
「やめろ変なもの押し付けるな。このブラコン!」
俺は唯愛を引き離す。
そう。この姉は変態なのだ。
実の弟であるこの俺が好きで好きで堪らないらしい。
俺にはまったく理解できないが……。
俺のタイプは、正反対だ。こんな、大人びたボン、キュ、ボンな人じゃない。
俺だって別に、姉がいるのはいい。放っておいてくれるならいいんだ。
けどこいつは構ってくる。うざい。
この思春期の複雑な時期にだ。普通、放っておくだろ? そういうもんだろ?
「ぶぅ……分かってるの? そういう子供に手をだしたら犯罪なんだよ? いけないんだよ? だから、たっくんはお姉ちゃんにその欲望をぶつけるの。私ならそのすべて……受け止めてあげるから!」
はぁはぁ……と息を荒げて、言い寄って来る。
なんだこいつ。気持ち悪いな。
まったく、俺はこんなに紳士なのに。なんで、この姉は淑女とは程遠い人間なんだ。
「近親相姦も立派な犯罪だろうが」
「残念だね。双方の合意があればOKなんだよ! だから……ね? しよ?」
「…………」
あ~あ、こいつのグラマラスボディのせいで萎えちまったな。心も体も。
「はやくどっかいけよ。邪魔だから」
「この私の体を見て何にも思わないなんて……末期だよ! 分かった! 今すぐに私が道を踏み外してしまったたっくんを救い出してあげる!」
「弟を好きになった時点で、お前のほうが道を踏み外しているからな。自分は普通みたいなこと言うな」
「愛さえあれば関係ないもん!」
お前のほうが末期じゃないか。
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